過酷な人生を送る青年「ロ・ギワン」が知る意外な幸せのかたちとは?
韓国の小説家チョ・ヘジンのベストセラー小説「ロ・ギワンに会った」を元に制作されたNetflix映画「ロ・ギワン」。
この作品は1人の青年の「祖国からの脱出」」と、「予期せぬ出会いから惹かれる女性との恋愛模様」の2つにフォーカスしたストーリー。
あらすじ
北朝鮮で生まれた主人公のロ・ギワン。生きていくために母親と脱北し、中国で生活を送っていました。しかし、ある出来事をきっかけに中国での生活もできなくなり、さらに遠い国ベルギーへと拠点を移すことになります。
なんとかして密入国を試みるギワン。しかし、難民申請をするために脱北者だと証明することは、そう簡単なことではありませんでした。
言葉の通じない国で、なんとか通訳の人を頼りながら出した申請。しかし、それが確認されるのは長い冬を過ごしてからだと告げられてしまいます。こうしてギワンはホームレス生活を余儀なくされてしまいました。
屋外のトイレを寝床に使うなどして、寒いヨーロッパの冬を頑張って生き延びようと心に決めたギワン。ところがある日、大事なお金の入った財布を盗まれてしまいます。その財布には生活費用はもちろん、ギワンにとって特別なお金も入っていました。
財布を盗んだ犯人は、マリという韓国出身の女性。彼女と出会ってから、ベルギーでのギワンの生活は大きく変わっていくことに……。
難民申請と大事なお金
ギワンと母親が中国に滞在していた頃、脱北者として中国当局に追われながら生活していました。自分の国を捨てて、知らない国で過ごす日々。そしていつ捕まるのかと怯えて過ごす恐怖は想像もつきません。
日本から海外へ渡る場合、パスポートがあれば簡単に行くことができます。そして、しばらく滞在したいときはビザを取得すればある程度の日数はいられますが……。逃亡する場合はどうなるのでしょうか?
様々な理由で故郷から逃れることを余儀なくされた人々は、難民として国際的に保護される流れとなります。しかしギワンの国の場合、難民ではなく反乱者とみなされてしまうそうです。
国家を裏切った犯罪者として扱われてしまうため、ギワンも逃れた先の中国で警察に見つかったときには逃げるしかありませんでした。
中国の家では、貧しいながらもひっそりと生活していた2人。母親は、表向きはギワンの存在のことを知らないふりをして過ごしていました。それでも噂が流れてしまい、母親の働く店に警察が話を聞きに来ることも。
ギワンは自国で何か悪いことをしたわけではなく、むしろ良い行いをしていたようです。それでも国からすれば犯罪者と変わらないという、悲しい現実……。
母親も、警察が来て我が息子の写真を見せられるたびに、「知らない」と嘘を言うのも辛かったはず。その優しい母親との生活が終わりを迎えてしまったこと、そしてベルギーへ行くための資金を手に入れたこと。この2つの出来事はどう関係するのか、きっとこの作品を観たら衝撃を受けることでしょう。
前半ではギワンの大切なお金の背景について、そして難民申請をする難しさについてもフォーカスしています。
ベルギーへ行くための資金は一体どうやって作ったものなのか、ぜひ作品の中でご覧ください。
絶望と出会い
どん底の状態でなんとかベルギーにやってきたギワン。なかなか言葉が通じない国で、どうにか難民申請の手続きを進行していきますが、申請は簡単におりるものではありませんでした。
申請が通らなければ「ロ・ギワン」と名乗って働くことも、住む場所を借りることもできません。
街に落ちている瓶を拾って僅かな小銭を稼ぎ、買い込んだ食料を公衆トイレで食べて朝を待つ日々。過酷な生活を送るギワンに、さらに追い打ちをかける出来事が襲いかかります。
いつも寒さをしのいでいたトイレが閉鎖されてしまい、代わりとなる場所を探し求めていたところ、街の不良たちに絡まれてしまいます。
怪我をした上に靴は池に投げ捨てられてしまい、びしょ濡れに。もうこれ以上ギワンを不幸な目に遭わせないで……。と思うほど、辛い展開が続きます。
ふらふらしながらたどり着いたのはコインランドリー。意識を失うように倒れたギワンが目を覚ましたときには、大事にしていた財布がすっかり消えていたのです!
このあたりで思わず観るのを辞めてしまおうかと思うほど、悲しくて辛いことが立て続けて起こるので、このままバッドエンドで終わるのではと頭をよぎりました。
このときお金を盗んだのは、ギワンに絡んできた不良たちの仲間の1人であるマリ。ベルギーで生活をしている韓国人女性で、彼女もまたギワンのように重いものを背負って生きていました。
母親から遠く離れて生活することを余儀なくされたギワン。そして、病気で母親をなくした過去があるマリ。
出会いは窃盗犯と被害者という、絶対に相容れないはずの関係でしたが、悲しい共通点をもつ2人が惹かれ始めるにはあまり時間はかからなかったようです。
困難の多い恋愛
前半では苦労してきたギワンの過去の回想シーンや、ベルギーに来てからのひどい扱いなどが描かれていますが、マリと出会ってからは彼女の悲しい過去や彼女が抱えているものについても明かされていきます。
マリが窃盗をしたことからはじまった、あまり良いとは言えない出会いの2人。ところがある日、ギワンの部屋で一緒に食事をしたことからあっという間に距離が縮まります。
たとえそこが高級レストランじゃなくても、気になる相手と食事に行ったら気持ちが膨らんで、恋愛感情が芽生えることもありますよね。
部屋に入ってから最初は警戒気味だったマリ。しかし誰かと食事をする嬉しさと安心感からか、ご飯にがっつく場面も。美味しそうに食べているとってもかわいいシーンは必見です!
あっという間に距離が縮まった2人ですが、ギワンはまだ難民ではなく逃亡者扱いのまま。
そして、マリにもある秘密がありました。それは、ベルギーでつるんでいる仲間に半ば強制的にやらされている良くないことで、抜け出せなくなってしまったのかもしれません。
マリの家に訪れたギワンはその秘密を知ることになるのですが、すぐに本気で止めようとします。どうでもいい相手だったら首を突っ込まない方が良さそうですが、既にギワンはマリに対して愛情を持ち始めていたのでしょう。マリの抱える秘密とは、一体何なのでしょうか……?
いつもどこか切なく険しい顔をしている2人ですが、恋人同士になってからはお互いとてもリラックスしている様子。ラブラブな2人のかわいらしい姿にはきっと癒されますよ。
悲しい過去や重い現実と戦う2人は、幸せな未来に向けて一緒に歩んでいけるのでしょうか。それとも別々の道を歩き、それぞれが思う幸せをつかめるのか。ぜひ本編を最後まで見てお確かめください。
まとめ
物語の終盤までかなり辛く重い話が続くので「これからどうなってしまうの!?」と少し不安になりますが、そこを何とか乗り越えて最後まで観ると「報われて本当によかった!」とほっとできますよ。
前半で描かれる悲惨で残酷な現実と、未来への希望が見えてくる後半とで構成されたストーリーは奥深く、とても見応えがある作品です。
国から逃亡して難民になるという難しい問題や、助けを求めた先でひどい扱いを受けている人は現実でも少なくないのでしょう。その中でも諦めずに僅かな光を見つけられるだけで幸せを感じられる。そんな人が1人でも多くいたらいいなと、深く考えさせられる作品です。
Netflix映画「ロ・ギワン」独占配信中