洗脳される恐怖を描いた「汚れなき子」小説が原作のドイツ産サスペンス
ドイツの新人作家ロミー・ハウスマンが執筆した小説「Liebes Kind(原題)」を基に、ドラマシリーズ化された同タイトル「汚れなき子」。
森の中で交通事故に遭った母親と幼い娘が、搬送先で信じがたい証言をすることからはじまるミステリー作品です。徐々に明らかになる恐ろしい監禁の真実に、映像作品なのにまるで小説を読んだかのような気分になる構成をしています。
親子はどんな生活をしていたのか、そしてなぜそんな事に巻き込まれてしまったのか。ストーリーのネタバレを交えながらご紹介します。
ストーリーのあらすじ
物語は仲の良さそうな家族のシーンから始まります。可愛い2人の子どもたちと優しそうな母親は、楽しそうに家で遊びながら勉強をしていました。しかし父親らしき男が帰ってくると状況は一変。入口に並んだ3人は、男が帰ってくるなり不思議なルールに従って手を表裏見せなければなりません。
この家は家族が平和に住む家ではなく、父親役である謎の男によって監禁された者たちでつくられた偽りの家族でした。
母親役である「レナ」が家から逃げようとしたことからその事実は判明します。記憶が曖昧な中、レナと名付けられた女性。彼女が徐々に本当のことを思い出し、巻き込まれた事件の真相を解明していくストーリーです。
レナは本物じゃない?
険しい表情をしながらも、子どもたちを可愛がっていたレナはなぜ逃げ出したのでしょう?
ストーリーが進むにつれて明らかになっていくのですが、父親役の男にレナと呼ばれている女性は「本物のレナ」ではありませんでした。
脱走を図ったレナは逃亡中に交通事故に遭ってしまいます。
搬送されたあと、ドクターからの連絡により病院に駆けつけたレナの両親。急いで保護服に着替えて意識のないレナと対面するのですが、姿を見るなり「レナじゃない!誰だこれは!」と取り乱してしまいます。
両親が取り乱した理由は、両親の娘であるレナ・ベックという女性は13年前に失踪していて未だに行方がわからないままだったから……。行方知れずの娘がようやく見つかったと、本来なら感動の再開を果たすはず。それが知らない女性だったら絶望してしまうのも無理はありません。
この時点ではまだレナの意識が戻っていないため、本人の口から真相を聞くことはできません。この女性は一体誰なのでしょう?
事件の真相を追っていた刑事のゲルトがこの騒ぎに駆けつけ、本物のレナの行方を探すとともに、この女性から事情を聞き出すため病院に通うようになります。
女性がレナではなかったということはわかりましたが、ここで不可解な点がひとつ。娘のハンナは、行方不明のレナの小さい頃にソックリな見た目をしていました。
ハンナは本物のレナの娘なのか、この謎の女性の娘なのか、さらに謎が増えていきます。
取り残された子供
娘のハンナの一言で、物語が大きく動きだします。自分には弟のヨナタンがいること、さらに生活していた場所ではまるで監禁のようなことをされていたと話し始めたことです。保護されて病院に来たのはレナとハンナの2人だけ……。
取り残されているヨナタンを救出すべく、聞き出した情報を元に警察たちが家の捜査に向かいます。
ハンナはまだ幼い女の子なのですが、保護されてからは終始「私は子供じゃない」と心のなかで唱えるシーンがあります。おかしな監禁生活の中で、一見普通に振る舞っていたように見えたハンナですが、この状況がふつうではないと感じていたのでしょう。
彼女たちはどのような生活を送っていたのか、様々な事実が明らかになっていきます。
ヨナタンは1人取り残されているのか、それとも父親が一緒なのか。そもそも無事なのか……。レナの立場でもハンナの立場でも、ヨナタンの立場でもどの目線から見ても怖い状況ですよね。
第3話では、レナだと思われていた女性がハンナたちの家に来て、レナと呼ばれるようになった経緯と同時にヨナタンの捜索活動が進む、ハラハラした展開が交互に続きます。
レナになるまで
レナと呼ばれていた女性はのちに意識がもどり、徐々に自分の本当のことを話せるようになっていきます。しかし脳内には男の声がずっと聴こえていて、言いたいことをなかなか口に出せない場面が多く登場します。これは同居していた男の洗脳によるものでした。
男が近くにいない状態でもずっと声が聴こえている気になってしまうほど、ひどい状況だったようです。幻聴と戦う日々が続いていましたが、ようやく自分が「ヤスミン・グラス」だと名乗りました。
ヤスミンがなぜレナとして生活することになったのか、ストーリーが進むごとに明かされていきます。
彼女はある日、仕事帰りに突然何者かに襲われ、目が覚めたら知らない場所。しかも手足は拘束され叫び声も挙げられない状態で、目の前には見知らぬ男。この突然の状況に冷静でいられる人はいないでしょう。
必死に状況を理解しようとするヤスミンですが、考えるよりも前に男が話しはじめます。
元々はダークな髪色をしているヤスミンですが、男は髪を脱色するように指示。それができれば水をくれると言います。
ヤスミンは指示に従い髪を金髪に染めたのですが、それだけでは終わりませんでした。本物のレナと同じ、「ある印」をつけられて突然の痛みにヤスミンは大絶叫!
さらに、その家でのルールをトイレの時間まで細かく提示され、レナとして生活をともにすることを強いられることに……。ヤスミンがこの事態に巻き込まれた裏には、本物のレナの失踪事件が大きく関わっていることに刑事のゲルトは気付き始めました。
犯人は誰?
情報がどんどん集まってくると、ヤスミンがレナではないこと以外にも、ハンナやヨナタンがヤスミンの実子ではないこと。ヤスミン以前にも被害にあった女性が何人もいたことなど、新たな事実がどんどん判明します。
誰が一体何のためにこんなことを始めたのか、それはラスト1話の終盤ギリギリまでわかりません。最終話では犯人の正体が判明して、事件は解決しますが……。この作品で1番恐ろしいのは犯人の存在や動機よりも、歪んだ愛の存在だと感じさせられるストーリーです。
その結果が子どもたち、特にハンナの性格に顕著に現れています。絶妙な心情のハンナを見事に演じているナイラ・シューバースちゃんの演技にもご注目をください。
まとめ
直接的な恐怖ではなく、じわじわとくるタイプの恐怖を描いたスリラー作品「汚れなき子」。ストーリーの1話1話が重苦しい内容ですが意外にも展開が早いので、続きが気になってあっという間に観終わってしまいます。
約50分の全6話という構成で、ドラマ作品を見切りたいけど時間がないという人にもおすすめです。
ホラー映画のようなシーンもほとんどないので、ミステリー小説を読んでいる気分でドラマを楽しみたい方はぜひご覧になってみてください。観終えたあとに原作の小説を読んでみるのもいいかもしれませんね♪
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