「極悪女王」ダンプ松本はどのようにして日本中を熱狂させ全国民の敵となった?
心優しいひとりの少女が狂乱のヒールへと生まれ変わる! 幼少期、新弟子時代、デビュー後といった経過を追いながら、伝説の髪切りマッチへ……。
1980年代のバブル期の日本は、プロレスブームに沸いていました。新日本プロレスのアントニオ猪木、全日本プロレスのジャイアント馬場と並び、全日本女子プロレスをけん引していたがクラッシュ・ギャルズです。そんな彼女たちの前に現れたレスラーこそ、後にその名をとどろかせるダンプ松本でした。
これまでになく凶暴で挑発的、かつファンサービスなどみじんも見せない徹底したヒールぶりが衝撃を与えた、ダンプ松本の半自伝的作品である、Netflixシリーズ「極悪女王」の見どころを紹介します!
ダンプ松本と長与千種、異なる道を歩んだ親友
松本香。後にダンプ松本として知られる少女は、酒と女におぼれ家を出て金を無心するときだけ帰ってくる父と、夫から暴力を受けつつも離婚できず内職で家計を支える母、おとなしい妹とともに古いアパートで暮らしていました。当時、ビューティー・ペアとして女子プロレスで人気を博していた、ジャッキー佐藤に憧れていた香は、母の取り計らいで就職したパンの製造販売店を飛び出し、全日女子プロレスの新人オーディションに参加し合格。憧れのプロレスラーとしての第一歩を踏み出します。
香とともに1980年(昭和55年)のオーディションで合格して新弟子となったのは、後にクラッシュ・ギャルズを構成する長与千種や北村智子(ライオネス飛鳥)たち。智子は早い段階から才能を開花させ、早々とデビューしたものの、香と千種は個性もなく落ちこぼれ状態のまま。厳しい練習にしごき、先輩からのいじめという逆境の中、二人がお互いを励まし親交を深めていったのは自然の流れでしょう。
香はヒールとしてデビル雅美率いる軍団ブラック・デビルに組み込まれますが、その優しすぎる性格で相手レスラーを凶器攻撃することができず、目が出ないまま。一方、お互いにやりたいプロレスをできた千種とライオネス飛鳥は意気投合し、クラッシュ・ギャルズを結成し、女子プロレス界屈指のスターへと駆け上がっていきました。
極悪同盟結成とクラッシュ・ギャルズとの戦い
クラッシュ・ギャルズとしてメディアからも注目を浴び、CDデビューやテレビ出演など華やかなトップレスラーになった千種。そんな姿を親友として暖かく見守っていた香ですが、あることをきっかけにヒールレスラー・ダンプ松本として覚醒。クラッシュ・ギャルズらベビーフェイスレスラーを相手に、竹刀を振り回し暴れる、フォークを使った凶器攻撃で流血させる、テレビ中継の放送席を壊すといった傍若無人ぶりを発揮するのでした。
香がなぜ日本国民の敵と呼ばれるヒールになったのかだけでなく、試合が終わりリングから離れたダンプ松本とはどんな人だったのかといった部分もあり、知られざる素顔を垣間見ることができる点も見逃せません。
またクライマックスでは、伝説となった長与千種との敗者髪切りデスマッチに加え、ダンプ松本の引退試合も登場。香と千種、親友だった二人の関係はどのように移り変わっていくのでしょうか。
歩き方までそっくり!ゆりやんのダンプ松本
「極悪女王」は、海外での活動を目指しているゆりやんレトリィバァがダンプ松本を、自粛期間によりメディアから遠のいていた唐田えりかが長与千種を、同じく番組出演数が激減していた剛力彩芽がライオネス飛鳥の役をオーディションで獲得しました。くしくも芸能活動の転機を迎えていた3人の役への取り組みはすさまじく、ゆりやんレトリィバァは40kg、唐田えりかと剛力彩芽は10kgの増量に加え、週3日のトレーニングと週2日のプロレス練習といった役作りで撮影に臨んだそう。
主役であるゆりやんレトリィバァのダンプ松本の完成度は非常に高く、立ち姿や竹刀を振り回す様子、独特のマイクの持ち方など、パッと見ただけでは本人と区別できないほど。
また、このドラマの作りこみはすさまじく、ダンプ松本、クラッシュ・ギャルズのリングコスチュームは当時のものを徹底再現。試合が進むと選手のあちこちに黒いあざが増えていくような、細かい演出も注目したいところです。
まとめ
ダンプ松本の現役時代をその目で見ている世代は懐かしく、知らない世代は日本中を熱狂させた当時のエネルギーを感じる「極悪女王」。心優しい少女が国民すべてを敵に回し、購入したばかりの愛車に辛辣な言葉を落書きされるような極悪ヒールになぜ変身したのか、極悪同盟はどのようにして誕生したのかといった、ダンプ松本の半生を描く全5エピソードをお楽しみください!
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