人生の一部をミュージカル化⁉ストーリーも音楽も楽しめる映画「tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!」
1996年にブロードウェイにて開幕し、現在も根強い人気を博しているミュージカル「レント」。
その作者であるジョナサン・ラーソンが作詞作曲を手掛けた自伝的ミュージカルを劇作家で作詞作曲家、そして俳優でもあるリン=マニュエル・ミランダが映画化した作品「tick,tick…BOOM!」。
有名なミュージカル作家がどのように夢を追いかけ自分と向き合ったのかを、おもしろく時には真剣に通常のストーリーとミュージカルをリズミカルにかけ合わせた作品です。
ジョナサン・ラーソンの人間味あふれる本作品の魅力を紹介します。
「tick,tick…BOOM!」のあらすじ
舞台は1990年のニューヨーク。物語の主人公ジョナサン・ラーソン(通称ジョン)は、ミュージカル作曲家としての成功を夢見て曲作りに励んでいました。彼は30歳目前にしても一向に芽が出ず、焦る日々を送っています。
そんな彼に、音楽界の巨匠たちの前で自分の音楽を披露するチャンスが!
意気揚々と曲を作り始めたのですが、なかなか納得のいく曲ができません。恋人との時間を確保することもできず、気がつけば光熱費の支払いも忘れ、どんどん暗闇に落ちていくような絶望を感じながら過ごしていました。
ジョンは無事に曲を生み出し、ミュージカル作曲家として成功をつかみ取ることができるのでしょうか?
彼自身の葛藤をはじめ、アルバイトをしているレストランでの、忙しくて気が狂いそうな瞬間、恋人との甘い時間などがミュージカルを交えながら進んでいきます。とても見やすいテンポの良さもオススメのポイントです。
tick,tick…BOOM!の意味とは?
タイトルの「チック、チック…ブーン」はB級映画や漫画に出てくる時限爆弾の効果音。これがジョンの中で鳴り響き、タイムリミットまでの音を表現しています。
ポール・マッカートニー、ミュージカル作曲家のソンドハイムなど彼の憧れる人たちは、みんな30歳になる前に大ヒット作品を作り成功を収めていました。ジョンもその波に乗ることを夢見ています。しかし、もうすぐ30歳になってしまうことが、少しずつタイムリミットへと近づいていく時限爆弾のように思えたのでしょう。
35歳という若さでこの世を去ってしまったジョナサン。彼の生み出した作品は、皮肉にも亡くなった後に大ヒットしました。彼にとって30歳という年齢は、もしかしたら成功を収めたいという思いだけではなく、人生の大きなタイムリミットとも捉えていたのかもしれませんね。
彼を支えた恋人や友人の存在
映画に登場するジョナサンの恋人スーザンと、友人のマイケル。2人もはじめはジョナサンと同じように夢を追う仲間であり、お互いを応援する関係でした。
スーザンは学んできた学業の分野よりも興味をもった、モダンダンスのプロ。マイケルはプロの役者をそれぞれ目指しています。
しかし彼女たちもそれぞれ自分の中にタイムリミットがあったのです。スーザンはジョナサンと一緒にいるため、好きなことを活かして安定した仕事に就くことを決めました。そしてジョナサンにも、夢を追い続けるだけではなく、現実を見てほしいという気持ちを伝えます。
しかしジョナサンは、大物音楽家の前で披露するためのミュージカル音楽をつくることで頭がいっぱい。
好きだけではどうにもならない難しい感情が、ジョナサンとスーザン双方の視点でミュージカル調の構成がされています。すれ違いがとてもわかりやすく表現されているのがポイント。
一方のマイケルは早々に俳優の夢を諦め、大手広告代理店に就職していました。そんなマイケルの新居は、なんとタワーマンション!
夢を追う同じ立場にいたはずの友人は、1歩どころか何歩も先に進んでいて、ジョナサンは自分の人生とのギャップにじわじわとショックを受けるのでした。
ここでは、全く落ち込んでいるようには見えないジョナサンと、マイケルによるハイテンションのタワマンミュージカルも見どころ!
それぞれの人生について、ダンスと合わせてジョナサンが語るシーンがあるのでぜひチェックしてくださいね♪
スーザンとマイケルは進む方向が変わっても、最後までジョンのことを支え続けます。また、ジョナサンも持ち前の明るさで2人のことを少なからず支える、素敵な関係を築いていたようです。
少し自分勝手なところもあるのですが、最後まで憎めないキャラが彼の魅力なのでしょう。
親しみやすいミュージカル
ミュージカル調の映画作品は、場面が切り替わった途端に突然歌い始める作品が多く、なぜこんなところで歌うのだろうと戸惑う人もいますよね。
この作品も本編の半分近くはミュージカルですが、まるで舞台で1人の人生を観ている感覚になる馴染みやすさが特徴です。
突然歌い始めるシーンはあまりなく、日常のワンシーンの中にジョンが作ったミュージカル解説シーンをはさみ、ある程度状況を理解させたところで静かにミュージカルが始まります。
ミュージカル作品を観ているというよりも、映画のセリフに音楽がのせられているような、不思議な心地良さがこの作品のポイント。
『tick,tick…BOOM!』にはジョナサン・ラーソンが生み出したたくさんの曲が詰められています。静かで美しいメロディから、かっこいいラップ調のものまでジャンルも幅広く、彼がどれだけの才能に恵まれていたのかがわかりますね!
それでも、曲を作っていた当時は相当悩み葛藤したのだと思うと、どんなにすごい人でも見えないところで苦しんでいることがたくさんあることをこの作品を通して感じることができます。
まとめ
夢を追い続けて、短い生涯を終えたジョナサン・ラーソン。作品が評価されたのは、彼が亡くなった後になってしまいました。長い年月が経過した今の時代でも、映画化されるほど愛される作品を作り上げた、彼の人生をテーマにしたミュージカル。ぜひ最後までご覧ください。
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