私はナニモノでもなく私!ファンタジーなアドベンチャーコメディ「ニモーナ」に感動♪
家族や友達とファンタジックなアクションコメディを観たい、という時は「ニモーナ」がおススメ!
本作は、2024年3月に行われた第96回アカデミー長編アニメーション映画賞にノミネートされました。
可愛らしい絵柄と深い内容で、子どもから大人まで楽しめるアニメです。
画面いっぱいに動き回るポップなキャラクター、コミカルなストーリー!
この作品では近年注目されている、差別やLGBTQ+も描かれています。
原作「Nimona」は、ノエル・スティーヴンソン(Noelle Stevenson)のグラフィックノベル。
原作の素朴な画風を生かしながら、最新3Dアニメの溢れ出る立体感が魅力。
深いテーマですが、笑っちゃうシーンもたくさん。キャラクター達のコミカルな動きと表情に元気を貰えます!
「ニモーナ」のあらすじ
平和な王国がありました。しかし、突如としてモンスターが国を襲います。そして、グロレスという女騎士がモンスターを倒し、再び王国に平和が訪れました。
グロレスは王国を守る部隊を結成。任命された騎士たちは、王国を守る任務を担います。
それから1000年後、科学が発展した近未来中世風の世界。騎士たちの風習は消えずに受け継がれています。代々騎士に選ばれるのは、グロレスの家系の者ばかり。
そんな中、主人公のバリスターは騎士を夢見ていました。孤児で庶民のため難しいと言われていましたが、幼い頃に女王に認められて本格的に騎士になるための道へ。
国を挙げて行われる騎士就任式の日。バリスターは肩身の狭い思いをしていました。
幼い頃、女王に認められたバリスターは嫉妬の対象でもあったのです。
グロレスの子孫である恋人のアンブローシャスに励まされ、バリスターは就任式に臨みます。
そこには、最悪の悲劇が待っていました。
女王から受け取った剣が急に変異し、女王を攻撃してしまったのです。
急な出来事に、アンブローシャスは女王を守ろうと、咄嗟にバリスターの腕を切り落としてしまいます。
バリスターの剣は女王の命を奪ってしまいました。
剣を手にしていたバリスター、恋人の腕を切り落としたアンブローシャス。
どちらにとっても信じられない行為とショックで、会場は大パニック。
大混乱の中バリスターはその場から逃げ出してしまいます。
誰かに嵌められていることは間違いなさそうですが、剣に細工をした真犯人はわかりません。
バリスターは女王殺しの犯人として追われる身になってしまいました。
王国でバリスターは悪者呼ばわりされ、ついには指名手配されることに。
そんな様子を観ていたニモーナは、バリスターの相棒になるため、彼の隠れ家に行きます。
そんなニモーナをよそに、バリスターは1人で真犯人を探しに街へ出ます。
しかし、指名手配されているため、すぐに投獄されてしまいました。
檻の中で途方にくれていたバリスター。助けに来たニモーナの手を借り、真犯人を探すために脱獄します。
脱獄後すぐに発見されてしまいますが、ニモーナの変身能力で事なきを得るのでした。
バリスターとニモーナは手を組んで、無実の罪を晴らそうと奮闘します。
彼らは無事真犯人を暴き、バリスターにかけられた冤罪を晴らすことができるのでしょうか?
アニメーションの素晴らしさ
作中には、主人公バリスターの逃亡シーンや戦闘シーンが度々登場。
衛兵に囲まれた城で、変幻自在に変身し、動き回るニモーナは、ダイナミック!
コミカルな動きやキャラクターの表情も多彩で、大変魅力的です。
リアルな人物描写ではなく、どこか人形的なデザインも、中世をモチーフにしたおとぎ話のようなSFにぴったり!
柔らかく動くアニメーションは、BGMに乗った軽快な動きでワクワクします。
ニモーナは動物にも変身! どれも動物の特徴を掴んだ動きで、生き生きしています。
猫の姿で驚いた時には毛が逆立ち、落ち込んだ時には耳を伏せ……。なんと可愛らしいこと!
猫の性質そのものを表現しているところも、変幻自在を得意とするニモーナの魅力ですね。
変身する動物は、猫のような毛並みのいい生き物から巨大なクジラまで!
瞬きしたら見逃してしまうくらい、様々なものに変化するニモーナの姿は飽きません。
絵本のような色彩の中でも、光の当たり方や自然の美しさはとてもリアル。
どのシーンも、絵画として飾っておきたいくらいの芸術性に溢れています!
形にとらわれない愛と絆
騎士の主人公に可愛い女の子といえば恋愛が絡みそうですが、この作品においてはそうではありません。
主人公・バリスターの恋人であるアンブローシャスは男性。
身分や生まれで周りからの差別はあっても、恋愛においての壁は無く、誰もが二人に寛容です。
ニモーナとバリスターも紆余曲折を経て、相棒という深い絆で結ばれていきます。
そこには友愛・親愛の想いはありますが、恋愛感情はありません。
性別に関係ない様々な愛の形を描いており、この世界で障害になるものは恋愛ではなく、少数派への差別や価値観です。
普通ってなに?
「私は私」を貫くニモーナ。
どうしてその姿に?
という問いに「I'm Nimona.」としか返さないニモーナ。
どんな姿でも、ニモーナという存在はひとつしかないのです。
ニモーナは何にでもなれますが、どこに馴染もうとしても溶け込みきれず、仲間外れにされてきたこともありました。
遠い過去、人間の姿をしたニモーナと伝説の女騎士グロレスは出会います。
グロレスは子供の頃、変身するニモーナの姿に疑問も持たず、仲良く暮らしていました。
ある時、熊に変身した姿を大人に見られ、モンスターだと迫害されてしまいます。
信じていたグロレスが剣を掲げ、ニモーナに「闇にかえれ」と告げた言葉が、ニモーナの胸に深く刺さりました。
ニモーナの心は闇でいっぱいになり、巨大な怪物に姿を変えてしまいます。
何にでも変身できるニモーナは、何にでもなれる自由と、何物でもないというマイノリティの象徴かもしれません。
バリスターはニモーナをありのままに受け入れますが、世間がそれを許さないことも知っています。
バリスターはニモーナに「普通の人間の姿」でいることを諭すのでした。
しかし、「普通」とはみんなと同じでなくてはいけないという、同調圧力も含まれています。
私たちにとって、「普通」とは何かを考えさせられる言葉ですね。
不変を望む古臭い社会
この作品での「悪」は、「欲と権力に目がくらんだ人間の愚かさ」という単純なものではありません。
善か悪かというものではなく"不変を望む価値観が引き起こす問題"が悪として描かれています。
"変わらないこと"から抜け出せない古い価値観、差別、規律……。
新しく変化していく社会を許せない人達の気持ち。
自分の価値観を貫き通すためなら、何を犠牲にしても構わない。
平和に見えた国は、真実から目をそらし、ニモーナをモンスターに仕立て上げます。
自分自身にとって理解できないものを恐怖するのは、人間の危険回避における本能かもしれません。
理解しようとせず無理やり排除しようとすることが、この物語では問題になっています。
自分の信じる信念や、古く伝わる信仰を守ることは素敵です。しかし、時にそれが頑なであればあるほど、間違った正義に向かうことも。
時代の流れと共に変化できる人達と、そうではない人達との対立。
現代社会に警鐘を鳴らしているのかもしれませんね。
まとめ
一度ついた印象は努力してもぬぐいきれない。
真実を見ようとしてもらえず、悪者にされてしまったニモーナのつぶやき。
「一度悪者だと思われたら終わりだから。努力してもずっとそう見られる。」
それが真実ではなかったとしても……。
情報が早く広がりやすい社会で、間違った情報が真実を捻じ曲げる危険もあります。
印象操作も、私たちが気を付けておきたい問題ではないでしょうか。
自分の価値観や固定された世界観からの脱却、世の中の変化に対応していかなければならないというメッセージも伝わってきます。
本作は、多様化の世界に向き合う、良いきっかけになりそうですね。
笑顔で動き回るニモーナはとにかく可愛い!
誠実で勇気のあるバリスターも素敵!
子どもも大人も楽しめて、勇気を貰えます。
アドベンチャーコメディが観たいあなたにおススメな一作です。
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